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午後31問

ebisawatakeshi

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 今年の本試験午後31問。
 誤っているものの組み合わせを答える問題。

 ア 会社法上の公開会社が株主に株式の割当てを受ける権利を与えないで募集株式を発行した場合において、募集事項として定めた払込金額が募集株式を引き受ける者に特に有利な金額であるときは、募集株式の発行による変更の登記の申請書には、株主総会の特別決議に係る議事録を添付しなければならない。

 公開会社であっても、第三者割当てで有利発行のときは、募集事項の決定は株主総会特別決議によってしなければならない(会社法199条2項、309条2項5号)ので、当然当該決議に係る議事録の添付を要するとし、これを正しい記述と判断しました。
次いでイの肢も正しい記述だったので、ウ以降を読まずに消去法(選択肢1と2にはア、3と4にはイがある)により、5(ウとオ)を正解としました。

 ところが、辰已法律研究所の教材担当の方が、「先生、辰已では正解を2(アとエ)としているのですが。」と。
 おどろいてウとオの記述を読んでみると、たしかにいずれも正しい記述でした。

 アが誤りの記述である根拠として、ある商業登記の実務書を見せて下さいました。
 これによると、「株主総会の議事録は添付を要しない(取締役会の議事録を添付すれば足りる)と解されている」とし、昭和30年6月25日民甲1333号通達(商法の一部を改正する法律等の施行に伴う登記事務取扱について)を根拠に。

 たしかに、会社法が施行されて削除された商法の会社編の規定(以下、「旧商法」と記載します。)においては、現行会社法の募集事項に相当する事項は会社の態様にかかわらず取締役会の決議事項であり(旧商法280条の2第1項)、株主割当以外で有利発行の場合には、株主総会特別決議の承認決議を要する(同条2項前段)ものとされていたところ、当該承認決議がなくても新株発行の無効原因とならず(最判昭46.7.16)、また当該決議は登記すべき事項自体の決議でないことから、取締役会議事録のみを添付すれば足り、承認決議に係る株主総会議事録の添付は要しないものとされていました。

 しかし、会社法においては前述したとおり、株主割当以外で有利発行の場合には、公開会社でも募集事項の決定自体を株主総会特別決議でしなければならないのですから、取締役会議事録を添付する余地はなく、商登法46条2項によって株主総会議事録を添付しなければならないのは当然なのです(したがって、前掲昭和30年の通達のうち本問に関する部分については会社法のもとにおいては適用されないのです)。

 たしかに、実務において実際に有利発行となっている場合でも、公開会社において募集事項の決定にかかる取締役会議事録を添付して申請してきたときは、有利発行に該当するか否かは登記官の審査の対象とならない(有利発行か否かは判断できない)ので、登記官としては受理することになるでしょう。
 しかしそのことは、試験の問題として、公開会社が株主割当以外で発行する場合において、募集株式を引き受ける者に特に有利な金額であるとした上で、株主総会議事録を添付しなければならないという記述を、誤りとすることとは全く別の問題です。

 先に引用した実務書は、改正前の先例を、改正による取扱いの変更を考慮せずに評価し採用してしまったものであり、本年31アは、こうした書籍の記述を、やはり検討評価せずに問題として出題してしまったものではないかと推測いたします。

 平成28年司法書士試験午後31問は、誤った記述はエのみであり、したがって正解肢のない問題であると思料します。


 橈骨(とうこつ)神経麻痺、ご心配をおかけしましたが(「別に心配などしていない。」なんておっしゃらないでね)、数日で回復しました。
 神経がダメなら筋肉で無理やり動かせようと、かなりハードな筋トレをしました(ジムのトレーナーさんはダンベルをあげている私を見て、「海老澤さーん」と呆れたような、困ったような表情で言っていましたが)。
 でもね、なんと言ってもこれに勝る治療法はありません。
160715 午後31問
 「ありがとう、心配ないよ。」

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