信託
三月の最終の週末、辰已法律研究所の横浜本校と東京本校で、「信託の登記」というテーマで講演をさせていただきました。
信託の起源についてはいくつか説があるようですが、中世イギリス説が通説のようです。
ざっと整理すると、十字軍の従軍する騎士たちが、その有する土地を信頼できる友人などに移転し、そこからの収益を家族の生活費などに充て、自分が生還すれば土地を返還してもらうということを行っていました。当時はこのような仕組を「to the use of 〇〇(受益者)」を語源として、“ユース”と称されていました。
その後も、国王からの領地没収や課税を回避することなどを目的として、ユースが利用されていたようです。
ユースの合法性については、コモンロー裁判所とエクイティ裁判所との対立などもありましたが、1535年にヘンリー8世によって「ユース禁止法」が制定され、その後1世紀ほどは、ユースは行われなくなりました。
ヘンリー八世。
最初の王妃との離婚を認めないヴァチカンに対抗して、英国国教会を作り、そして6人の王妃うち2人(1人は2番目の王妃アン・ブーリン。もう一人は確か4番目か5番目の王妃)を処刑した大男。
ホルバインの描く肖像画から伝わってくる印象は、“冷酷”“傲慢”“横暴”という言葉がピッタリとあてはまるようです。

「この人怖い。」
閑話休題。
しかし、イギリス国民におけるユースの要望がなくなったわけではなく、禁止法を潜脱するためユースにさらにユースを重ねる“二重(ダブル)ユース”なども考案され、17世紀にはユースを合法とする旨のエクイティの判決がなされ、広く普及するにつれて呼称も“ユース”から“トラスト”になっていったということです。
試験には必要のない知識ですが、受験勉強の合間の息抜きに、各法の沿革などを調べてみるのも良いのでは。
前回のクイズの答えは、何かでお調べにならなくても、一行目に書いてありますよ。
ニコライ二世のお父さんの名前は、「アレクサンドラ」。
ロシア人は名前の後に“父称”が付きます。これは大雑把に言えば、父の名前に、男性でしたら“вич(ヴィチ)”を、女性でしたら“вна(ヴナ)”を付けたものです。
ですからロシア人のフルネームで表現すると、次の通りとなります。
名前 + 父称 + 姓
Владймир Владймирович Путин
ロシアの現大統領のお名前は、お父さんと同じ“ヴラジーミル”。
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信託の起源についてはいくつか説があるようですが、中世イギリス説が通説のようです。
ざっと整理すると、十字軍の従軍する騎士たちが、その有する土地を信頼できる友人などに移転し、そこからの収益を家族の生活費などに充て、自分が生還すれば土地を返還してもらうということを行っていました。当時はこのような仕組を「to the use of 〇〇(受益者)」を語源として、“ユース”と称されていました。
その後も、国王からの領地没収や課税を回避することなどを目的として、ユースが利用されていたようです。
ユースの合法性については、コモンロー裁判所とエクイティ裁判所との対立などもありましたが、1535年にヘンリー8世によって「ユース禁止法」が制定され、その後1世紀ほどは、ユースは行われなくなりました。
ヘンリー八世。
最初の王妃との離婚を認めないヴァチカンに対抗して、英国国教会を作り、そして6人の王妃うち2人(1人は2番目の王妃アン・ブーリン。もう一人は確か4番目か5番目の王妃)を処刑した大男。
ホルバインの描く肖像画から伝わってくる印象は、“冷酷”“傲慢”“横暴”という言葉がピッタリとあてはまるようです。

「この人怖い。」
閑話休題。
しかし、イギリス国民におけるユースの要望がなくなったわけではなく、禁止法を潜脱するためユースにさらにユースを重ねる“二重(ダブル)ユース”なども考案され、17世紀にはユースを合法とする旨のエクイティの判決がなされ、広く普及するにつれて呼称も“ユース”から“トラスト”になっていったということです。
試験には必要のない知識ですが、受験勉強の合間の息抜きに、各法の沿革などを調べてみるのも良いのでは。
前回のクイズの答えは、何かでお調べにならなくても、一行目に書いてありますよ。
ニコライ二世のお父さんの名前は、「アレクサンドラ」。
ロシア人は名前の後に“父称”が付きます。これは大雑把に言えば、父の名前に、男性でしたら“вич(ヴィチ)”を、女性でしたら“вна(ヴナ)”を付けたものです。
ですからロシア人のフルネームで表現すると、次の通りとなります。
名前 + 父称 + 姓
Владймир Владймирович Путин
ロシアの現大統領のお名前は、お父さんと同じ“ヴラジーミル”。

大津事件
来日中のロシア皇太子ニコライ・アレクサンドロビッチが、滋賀県の大津で巡査津田三蔵に切り付けられた事件。たしか中学か高校の社会の授業で勉強したと思います。
このブログをご覧の皆さんは、“司法の独立”というテーマを通じても、この事件を覚えているのではないでしょうか。
皇太子は、後のニコライ2世となりました。「愛するママ」の誕生日に結婚し、愛妾を持たず、妻と子供たちを愛し、「怪僧」ラスプーチンを宮廷に入れ、そして最後は家族全員無残にも射殺された、ロマノフ王朝最期のツァーリです。
今年は、ロシア革命から100年目、ということはロマノフ王朝終焉から100年を経過する年になります。
東京の文京区にある“東洋文庫ミュージアム”ではこれを記念して「ロマノフ王朝展」を4月9日まで開催しています。

わくわくするような書庫です。
東洋文庫ミュージアムの近くに、“六義園”があります。今は枝垂桜が咲いていて、4月2日までライトアップもしています。
ライトアップされた桜は、もちろん美しいのですが、何といっても人が多くて、とても幻想的は雰囲気を味わうことができないのは残念です。
六義園にいつ行くのが良いかと聞かれたら、私はイベントや特に見るべきものがないときと答えます。
人の少ない庭園を、ゆっくりと、ところどころに掲げられている和歌を楽しみながら、茶屋では、お薄を頂いて一休み。

ところで、最後に一つクイズを。
「ニコライ二世のお父さんの名前は?」
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このブログをご覧の皆さんは、“司法の独立”というテーマを通じても、この事件を覚えているのではないでしょうか。
皇太子は、後のニコライ2世となりました。「愛するママ」の誕生日に結婚し、愛妾を持たず、妻と子供たちを愛し、「怪僧」ラスプーチンを宮廷に入れ、そして最後は家族全員無残にも射殺された、ロマノフ王朝最期のツァーリです。
今年は、ロシア革命から100年目、ということはロマノフ王朝終焉から100年を経過する年になります。
東京の文京区にある“東洋文庫ミュージアム”ではこれを記念して「ロマノフ王朝展」を4月9日まで開催しています。

わくわくするような書庫です。
東洋文庫ミュージアムの近くに、“六義園”があります。今は枝垂桜が咲いていて、4月2日までライトアップもしています。
ライトアップされた桜は、もちろん美しいのですが、何といっても人が多くて、とても幻想的は雰囲気を味わうことができないのは残念です。
六義園にいつ行くのが良いかと聞かれたら、私はイベントや特に見るべきものがないときと答えます。
人の少ない庭園を、ゆっくりと、ところどころに掲げられている和歌を楽しみながら、茶屋では、お薄を頂いて一休み。

ところで、最後に一つクイズを。
「ニコライ二世のお父さんの名前は?」

破天荒
以前から時々書物などで見かけ、またテレビなどで聞いて気になっていたのですが、最近もCMで見かけました。
どうも“破天荒”というのを「無鉄砲」とか「奔放」のような意味で使っているようです。
言葉の意味や発音は変化していくものですが、故事成語に関しては固有の意味があり、それと異なった意味で使われることはないはずです。
日常生活における会話で言い間違えたり、誤った言葉の使いかたをするのは、まあそれ程問題はないと思います(私もきっとしているでしょう)。
しかし、出版物や公共の電波において、このような誤用をするのは、きわめて恥ずかしいことです。ちょっと辞書で調べれば直ぐにわかることですし。
みなさんも、実務や勉強において、ちょっと気になるとか記憶に自信がないなと思ったときは、必ず六法で条文にあたってくださいね。
「司法書士試験での“天荒”は・・・。」

「そんなところは、ないと思いますよ。」
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言葉の意味や発音は変化していくものですが、故事成語に関しては固有の意味があり、それと異なった意味で使われることはないはずです。
日常生活における会話で言い間違えたり、誤った言葉の使いかたをするのは、まあそれ程問題はないと思います(私もきっとしているでしょう)。
しかし、出版物や公共の電波において、このような誤用をするのは、きわめて恥ずかしいことです。ちょっと辞書で調べれば直ぐにわかることですし。
みなさんも、実務や勉強において、ちょっと気になるとか記憶に自信がないなと思ったときは、必ず六法で条文にあたってくださいね。
「司法書士試験での“天荒”は・・・。」

「そんなところは、ないと思いますよ。」

監督
早押し問題です。
“公開会社(監査等委員会設置会社及び指名委員会設置会社を除く)において取締役の職務の執行を監督する機関は何でしょうか?”
「監査役!」
ブー
正解は、「取締役会」です(会社法362条2項2号)。
監査役は、取締役の職務の執行を「監査」する(会社法381条1項)のであって、「監督」するのではないのです。
監督と監査の違いは・・・。
まずは広辞苑によると。
「監督」は“目をくばって指図をしたり取り締まったりすること。また、その人・機関”
「監査」は“監督し検査すること。”
うーん、どうでしょうか。監査のなかに監督が含まれてしまっています。
これによると、指図をしたり取り締まったりすることも監査の範囲になってしまいますが、ちょっと違うような気がします。
有斐閣法律用語辞典で調べてみましょう。
「監督」は、“人又は機関が、他の人又は機関の行為の合法性又は合目的性を監視し、必要に応じて指示、命令等をすること。”
「監査」は、“事務・業務の執行又は財産の状況の正否を調べるために行う検査。”
この意味の方が、会社法で使われている用語としては合致していると思います。
平成26年の会社法の改正であらたに設けられた「監査等委員会」。
この機関は、監査だけではなく、一定の監督的機能も有しているので、単に「監査」委員会という名称では不適当で、要項のおいては仮称として「監査・監督」委員会とされていましたが、取締役会の有する監督機能全般があるのでもないので「監査等」委員会という名称になりました。

“お手を触れないで下さい”ですよ。

「大丈夫、触れているのは“足”なの。」

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「監査役!」
ブー
正解は、「取締役会」です(会社法362条2項2号)。
監査役は、取締役の職務の執行を「監査」する(会社法381条1項)のであって、「監督」するのではないのです。
監督と監査の違いは・・・。
まずは広辞苑によると。
「監督」は“目をくばって指図をしたり取り締まったりすること。また、その人・機関”
「監査」は“監督し検査すること。”
うーん、どうでしょうか。監査のなかに監督が含まれてしまっています。
これによると、指図をしたり取り締まったりすることも監査の範囲になってしまいますが、ちょっと違うような気がします。
有斐閣法律用語辞典で調べてみましょう。
「監督」は、“人又は機関が、他の人又は機関の行為の合法性又は合目的性を監視し、必要に応じて指示、命令等をすること。”
「監査」は、“事務・業務の執行又は財産の状況の正否を調べるために行う検査。”
この意味の方が、会社法で使われている用語としては合致していると思います。
平成26年の会社法の改正であらたに設けられた「監査等委員会」。
この機関は、監査だけではなく、一定の監督的機能も有しているので、単に「監査」委員会という名称では不適当で、要項のおいては仮称として「監査・監督」委員会とされていましたが、取締役会の有する監督機能全般があるのでもないので「監査等」委員会という名称になりました。

“お手を触れないで下さい”ですよ。

「大丈夫、触れているのは“足”なの。」

